相続から終活へ

プロフィールを読んでいただくと分かるように、僕の専門は相続手続全般です。

もともとは法律事務所の職員として裁判実務の補助全般を行っていたのですが、10数年ほど前からはなんとなく相続関係の業務を扱うことが増えてきまして、すでに保有していた行政書士の資格を登録したこともあって、次第に相続業務を専門とするようになっていきました。相続業務が性に合っていたのかもしれません。

現在は行政書士として弁護士と連携しながら、遺言書作成から、遺言執行、遺産分割協議書作成、遺産整理手続全般のほか、相続登記や相続税申告手続(これらは弁護士・税理士の補助として)まで、相続手続きのほぼ全般にかかわる業務を行っています。

それに加えて、ここ数年は相続にとどまらず、いわゆる「終活」という大きな視点で相続も捉えなおす必要があることを感じています。

終活との出会い

これまで関わってきた相続業務はいわば人の死という「点」の出来事を起点として発生する業務であることが通常でした(法律事務所経由の案件が多いということも一因でしょうけど)。その「点」が発生する前からその人の人生に長く関わることは(遺言作成業務はある種その様相はありますが)、基本的にあまりなかったと言っていいでしょう。

むしろ人の死という「点」の後に起こる様々な混乱、たとえば親族同士の争いだとか、残された家族の困窮だとか、を目の当たりにすることのほうが日常でした(これも法律事務所の相続案件という特殊性が大いに関わるところですが)。

そしてそのような相続によって家族同士で心ならずも争いになってしまう現実をみながら、円満な相続を実現するためには相続という「点」だけに関わっているだけではダメだ、人生後半から相続発生までを「線」として関わる必要があるのではないか、ということを常々感じていました。

そのタイミングで出会ったのが「NPO法人相続アドバイザー協議会」「終活カウンセラー協会」という民間団体であり(現在は非会員)、またファイナンシャル・プランナー(FP)という国家資格でした。これらの団体の研修を受けたり、FP取得のための勉強をする中で、相続を具体的に「線」として扱うにはどうすればいいのか、を学んでいきました。

そして僕なりに考える「終活」のイメージが出来上がってきたのです。

その終活って何?

この「終活」というのもだいぶ定着してきたワードですけど、決まった定義はとくになくて、いろいろな人や団体が独自の定義をしているのが現状です。このホームページでは「終活」を「人生を終わりまで楽しく暮らすための活動」としています。

終活といえばお墓とか葬儀とか供養とか。あるいは相続だとか断捨離だとか。そういう自分が死ぬときを想定して、そこに備えるための活動、とすることが一般的ではあります。

もちろん、その狭い意味での「終活」も大事です。

ただ、人はどうしても自分の「死」をはるか遠いものとして想定しがちです。実際はすぐ近くに来ているかもしれないにもかかわらず。だから、「終活」自体もはるか遠いものとして、自分には当面関係ないものと捉えてしまいます。でもあなたがいつ死ぬなんてことは、誰にもわかりません。明日かもしれないし、1年後かもしれない。

だからあえてこのサイトでは「終活」を思いっきり長いスパンで考えてみることをおすすめしたいのです。終活とは人生を終わりまで楽しく暮らすための活動。そう捉えると、終活を早く始めてみたくなりませんか。

じゃあその「終活」って具体的になにするのよ、ってことになりますが、大きく3つの活動を提案したいと思います。

ライフプランを立てる

1つ目は自分のこれからの人生を俯瞰して眺めること、いわゆるライフプランを立てることです。ここがすべての出発点になります。立てたライフプランは一度で終わらせず、常に更新する必要があります。ライフプランはファイナンシャル・プランナーが得意とするところ。作り方に関してはまた詳しく書きたいと思います。

リスクに備える

2つ目は作ったライフプランを俯瞰して自分の人生に起こりうる様々なリスクに備えること。事故病気のリスクはもちろん、2000万円問題で話題になった老後資金のリスク、そして人生100年時代における認知症介護などの長生きリスク。お釈迦様は人生で避けることのできない苦しみとして「生病老死」を挙げておられますが、超高齢社会の現代ではまさに生きること自体のリスクが突きつけられています。

このようなリスクにそなえるためのセーフティネットが実はわが国ではかなり手厚く張り巡らされています。ただ制度の理解や利用がうまくできず無駄に生活を困窮させている世帯も少なくないのが現状です。イギリスの哲学者フランシス・ベーコンが言ったように「知は力なり」です。ぜひわが国の社会保障制度について浅くても広く知って欲しいと思います。

もちろん、遺言や信託、後見などの法的制度や、贈与税や相続税など税に関する知識を得ることも暮らしの大きな備えになります。また社会保険に上乗せして民間の保険を活用したり、貯蓄だけでなく投資を行ったりすることも様々な資金リスクへの備えになるでしょう。

このブログでは法律実務家の視点に加え、ファイナンシャル・プランナーとしての視点からも、そういった「備え」に関する情報を発信していければと思っています。

楽しみをみつける

そして3つ目が人生の楽しみを見つけることです。

楽しみと一言で言ってもそれは人の数だけ無限にあるでしょう。家にこもって趣味に没頭する楽しみもあれば、外に出て各地をめぐる楽しみもあります(コロナ禍で難しくなっていますが…)。仲間と集う楽しみもあれば、孤独を楽しむこともあるでしょう。

なんでもいいのです。自分だけの楽しみを見つけましょう。同じ楽しみを共有する仲間が増えればまたそれもよしです。楽しみのない長生きだけの人生なんてクリープを入れないコーヒーみたいなもんですから(例えが古いですね)。

追記(2022.1.1)

ニュースレターでも記事にしましたが、最近は上記3つの視点からさらに進んで、「楽しみ」「健康」「お金」「備え」の4つの視点で終活を考えることを提案しています。

すなわち、終活でもっとも重要なのは「楽しみ」であり、同じぐらい大事なものが「健康」。

そして必要十分な老後資金を用意しておきましょうということで「お金」。

最後に「備え」として、人生を俯瞰して見るためのツールとしてのライフプランニングや、認知症や介護に備えるための行政の制度や法律的な制度を知っておくこと。

言ってることは同じなんですが、「楽しみ」「健康」「お金」「備え」という4つの視点で考えた方がよりわかりやすいでしょう。

当ブログも4つの視点で(特に「お金」と「備え」は専門家の視点から)情報を発信していく予定ですのでご活用ください。

まずは

(1)エンディングノートで現在の情報を整理する
(2)ライフプランニングで将来を俯瞰する

という手順で終活をすすめていきましょう。

ニュースレター掲載の記事はこちら

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