弔慰金に相続税はかかる?

Q.夫が亡くなり夫の会社から弔慰金をいただきました。税金はかかるでしょうか。

A.「最後の給与の半年分ないし3年分」を超える部分については相続税の対象となります。

解説

弔慰金等(★1)については、明らかに退職手当金に当たる場合を除き(★2)、業務上の死亡の場合は最後の給与(★3)の3年分それ以外半年分に相当する金額の範囲内で非課税です。  

これらを超える部分については退職手当金にあたるものとされ(★4)、相続税の対象となります(★5)。  

例えば、弔慰金が2000万円、最後の給与が50万円、業務上の死亡の場合、50×12×3=1800万円は非課税、残りの200万円が退職手当金として課税対象となります。  

もう少し詳しい解説

★1 弔慰金、花輪代、葬祭料等を含めて「弔慰金等」といいます。(相続税法基本通達3-20)

★2 名目が弔慰金でも、退職給与規程に基づいて支給される等、事実上退職手当金といえるような場合などです。

★3 被相続人の死亡当時における賞与以外の普通給与(俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当等の合計額)をいいます。(同3-20)

★4 相続税法基本通達3-20 被相続人の死亡により相続人その他の者が受ける弔慰金、花輪代、葬祭料等(以下「弔慰金等」という。)については、3-18及び3-19に該当すると認められるものを除き、次に掲げる金額を弔慰金等に相当する金額として取り扱い、当該金額を超える部分の金額があるときは、その超える部分に相当する金額は退職手当金等に該当するものとして取り扱うものとする。(昭57直資2-177改正) (1) 被相続人の死亡が業務上の死亡であるときは、その雇用主等から受ける弔慰金等のうち、当該被相続人の死亡当時における賞与以外の普通給与(俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当等の合計額をいう。以下同じ。)の3年分(遺族の受ける弔慰金等の合計額のうち3-23に掲げるものからなる部分の金額が3年分を超えるときはその金額)に相当する金額 (2) 被相続人の死亡が業務上の死亡でないときは、その雇用主等から受ける弔慰金等のうち、当該被相続人の死亡当時における賞与以外の普通給与の半年分(遺族の受ける弔慰金等の合計額のうち3-23に掲げるものからなる部分の金額が半年分を超えるときはその金額)に相当する金額

★5 死亡退職金等の取り扱いについてはこちらのQ&Aを参照。

※掲載している情報は、2021年10月時点での法令・税制・商品等に基づきます。将来、法令・税制・商品内容等が変更される場合があります。

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死亡退職金に相続税はかかる?

Q.夫が亡くなり夫の会社から死亡退職手当金をいただきました。税金はかかるでしょうか。

A.「法定相続人の数×500万円」を超える部分については相続税の対象となります。

解説

退職手当金等(★1)については、故人(被相続人)の死亡後3年以内に支給が確定して遺族(相続人)が支給を受けた場合は(★2)、故人の相続財産とみなされ相続税の対象となります(★3)。

このうち、「500万円×法定相続人の数(★4)」で求めた額までは非課税ですが、これを超える部分には相続税が課税されます(★5・6)。

例えば妻と子2人を持つ夫が亡くなり妻が死亡退職金2000万円を受け取った場合、3×500=1500万円までは非課税となり、残りの500万円に相続税がかかってくるわけです。

もう少し詳しい解説

★1 「被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与」をいいます。(相続税法基本通達3-18)

★2 死亡後3年経過後に遺族が受け取った場合は相続税でなく「所得税」の対象となります(一時所得)。

★3 そもそも民法上は退職手当金は相続財産ではなく受け取った人の固有の財産なのですが(したがって遺産分割の対象とはなりません)、税法上は相続財産とみなされ、一定額を超えると相続税が課せられることになっています。死亡保険金と同じ扱いですね。
相続税法第3条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、当該各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなす。この場合において、その者が相続人(相続を放棄した者及び相続権を失つた者を含まない。中略)であるときは当該財産を相続により取得したものとみなし、その者が相続人以外の者であるときは当該財産を遺贈により取得したものとみなす。
二 被相続人の死亡により相続人その他の者が当該被相続人に支給されるべきであつた退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(政令で定める給付を含む。)で被相続人の死亡後三年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合においては、当該給与の支給を受けた者について、当該給与

★4 法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます(相続税法3)。また、法定相続人の中に養子がいる場合の法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。(同15)

★5 相続税法第12条 次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
六 相続人の取得した第三条第一項第二号に掲げる給与(以下この号において「退職手当金等」という。)については、イ又はロに掲げる場合の区分に応じ、イ又はロに定める金額に相当する部分
イ 第三条第一項第二号の被相続人のすべての相続人が取得した退職手当金等の合計額が五百万円に当該被相続人の第十五条第二項に規定する相続人の数を乗じて算出した金額(ロにおいて「退職手当金等の非課税限度額」という。)以下である場合 当該相続人の取得した退職手当金等の金額
ロ イに規定する合計額が当該退職手当金等の非課税限度額を超える場合 当該退職手当金等の非課税限度額に当該合計額のうちに当該相続人の取得した退職手当金等の合計額の占める割合を乗じて算出した金額

★6 相続人以外の人が取得した退職手当金等には、非課税の適用はありません。また相続人が死亡退職金を受け取ったあとに相続放棄をした場合も、非課税の適用はなくなるので注意が必要です(相続欠格・廃除も同様)。

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遺産の分け方

 Q. 家族が亡くなり相続が発生しました。相続人はどのように遺産を分ければいいのでしょうか。

A. 遺言があればそれに従います。なければ相続人のみなさんが話し合って分け方を決めてください。もし話し合いがつかなければ、裁判所を利用する方法もあります。

解説

遺産分割は亡くなった方(被相続人)の残された財産(遺産)について権利者を定める手続です。遺産分割の方法としては「遺言」による方法、相続人の「協議」による方法、裁判所の「調停・審判」による方法があります。

まず、被相続人が遺言を残しておられれば原則としてこれに従います(★1)。
遺言執行者の定めがある場合は遺言執行者が遺言の内容に従って遺産を分割します(★2)。

遺言がない場合は(★3)、相続人(★4)全員で協議して分け方を決めてください。

法律でも一定の相続割合を定めていますが(★5)、皆さんの話し合いのほうが優先されます。

話し合いが困難でどうしても揉めてしまう場合は裁判所を使う方法もありますが(★6)、まずは弁護士や相続アドバイザーに相談してみてください。

相続は譲り合いの精神で、できるだけ話し合いで円満に決めるのが理想です。

もう少し詳しい解説

★1 被相続人は遺言によって自己の財産の分け方(分割の方法)を決めておくことができます。
民法908条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

★2 民法1006条〜1024条

★3 遺言で遺産の分割を禁じている場合(民法908条)を除き、遺言があっても相続人全員の協議で遺産分割することは可能です(遺言執行者がいる場合はその同意も必要)。
民法907条1項 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。

★4 民法886条〜895条。配偶者(夫・妻)のほか、ざっくりと(1)子(2)親(3)兄弟姉妹、の順で相続人になります。詳しくはこちら

★5 法律に定められている相続割合(法定相続分)は次の通りです。揉めた場合の拠り所といえるでしょう。
相続人が(ア)配偶者と子の場合:1/2 ずつ(イ)配偶者と親の場合:2/3と1/3(ウ)配偶者と兄弟姉妹の場合:3/4と1/4。
民法900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

★6 分割協議がまとまらないときは相続人は家庭裁判所に分割を請求できます。一般的にまず調停(裁判所での話し合い)手続で解決を試みます。調停ではまとまらない場合は、審判(裁判官に決めてもらう)手続に移行することになります。なお審判では基本的に法定相続分どおりに分割されることになります。
民法907条2項 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。


 

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殺人と相続

Q.夫を殺害した妻に相続権はありますか。殺害しようとしただけの場合はどうでしょうか。

A. 夫を殺害して刑に処せられた妻には夫の遺産に対する相続権はありません。殺害しようとして殺人未遂で刑に処せられた場合でも同様です。

解説

相続人に不正な事由が認められるとき法律上当然に相続権が剥奪される制度があります。これを相続欠格(そうぞくけっかく)といい、民法で5つの事由が定められています。(★1)

本ケースのように、故意に(わざと)被相続人を殺害したり、殺害しようとして逮捕され、刑に処せられた者は(★2)法律上当然に相続権を失います。

また遺言を無理やり書かせたような場合や、遺言書を偽造したり、破棄したり隠したりすることも相続欠格にあたります(★3)。

一種の制裁規定ですので、欠格者が相続権を失うのは問題となる特定の相続においてのみです。例えば、本ケースで妻が相続権を失うのは夫との関係のみです。その他の相続まで相続権を失うわけではありません。

また相続欠格により相続権を失ったとしてもその子が代襲して相続することは可能です(★4)。

もう少し詳しい解説

★1 遺産を無理やり奪い取るような行為をした場合ですね。
民法891条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

★2 「刑に処せられた」こと、つまり実刑判決で服役したことが要件です。犯罪が発覚する前や、裁判中は相続欠格にあたりませんが、実刑が確定すると相続時から相続人でなかったことになります。また、例えば介護苦から連れ合いを殺害しようとして逮捕された夫や妻に執行猶予付判決が出ることがあります。この場合、執行猶予期間が満了すると刑の効力が消滅するため相続権は失わないことになります。

★3 普通の人は相続のために殺人まで犯すことはないでしょうが、高齢の親を言いくるめて自分に有利な遺言を書かせたり、自分に不利な遺言を見つけて隠したり捨てたりすることは普通の人でも考えてしまうかもしれません。しかしそれが発覚すると相続欠格により相続権を失ってしまいます。決してやらないように。

★4 制裁は非行者自身に対するものという趣旨です。
民法887条2項 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

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夫の兄弟に相続権はありますか

Q.夫が亡くなったあと、夫の兄弟が遺産を分けるよう言ってきています。夫の兄弟に相続権はあるのでしょうか。

A. ある場合もあります。

解説

法律で定められている相続人(法定相続人)は次のとおりです。

まず配偶者(夫・妻)は常に相続人になります(★1)。

それ以外は次の順位で相続人になります。

  • (第1順位)(★2)
  • (第2順位)直系尊属(★3)
  • (第3順位)兄弟姉妹(★4)

子がすでに亡くなっている場合はその子(故人からみて孫)が相続します(代襲相続)。
孫も亡くなっている場合はその子(ひ孫)が相続します(再代襲)。以下同じ。(★5)。

兄弟姉妹が相続人になるときに、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子(甥姪)が一代に限り代襲相続します(★6)。

以上から本ケースでは、ご夫婦にお子様がおらず、ご主人のご両親もご存命でなければ、ご主人の兄弟に相続権が生じます。

ただし、ご主人が例えばあなたに全財産を相続させるといった遺言を残しておられれば、ご兄弟に相続権は生じません(★7)。

もう少し詳しい解説

★1 配偶者は他の相続人と常に同一順位で相続人になります。
民法889条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

★2 子は実子(特別養子に出した子は除く)・養子を問いません。
胎児も相続に関してはすでに生まれたものとみなして相続できます。死産した場合ははじめから相続人でなかったことになります。
民法886条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。民法887条1項 被相続人の子は、相続人となる。

★3 直系尊属とは父母、祖父母など自分より上の世代の縦に直線上につながる親族を指します。実父母、養父母を問いません。親等が近いものが優先されますので、実父母が亡くなっており、養父母が健在な場合は、祖父母がいたとしても養父母が第2順位の相続人になります。
民法889条1項 次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。

★4 兄弟姉妹が第3順位です。第4順位はありませんので、ここまでで相続人となるものがいなければ、他に親族がいたとしても相続人不存在ということになります。
民法889条1項 次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹

★5 被相続人の子が先に亡くなっている場合の相続人(代襲相続人)は、子の子で、かつ被相続人の直系卑属(世代が下の縦に直線上につながる親族)です。要は故人からみて孫やひ孫にあたる子でなければなりません。養子の縁組前の子など、子の子であっても被相続人の直系卑属でない者は代襲相続人とはなりません。
民法887条2項 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

★6 兄弟姉妹の代襲相続は一代限りです。甥や姪の子は相続人にはなりません。
民法第889条 次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第887条第2項の規定は、前項第二号の場合について準用する。

★7 遺言は法定相続分に優先するので、ご夫婦で相互に遺言を書いておくのが無益な相続争いを防止する最良の方法です。ご兄弟には遺留分がないので遺留分を主張することもできません。
民法第902条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。
2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

1042条1項本文 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第1項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。

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遺言による寄付と相続人の遺留分

Q.夫が田辺市に全財産を寄付するという遺言を残して亡くなりました。妻である私は一切財産を受け取れないのでしょうか。私達に子はおらず、夫の両親も他界していますが、夫には兄弟がいます。

A. 遺留分という制度がありますので、この遺留分を主張して一定の遺産を取得することが可能です。

解説

遺留分とは、相続に際して、兄弟姉妹以外の相続人に法律上保障される、遺産の一定の割合のことをいいます。

具体的には、直系尊属(親・祖父母など上の世代の縦に繋がる血縁者のこと)のみが相続人である場合は遺産全体の3分の1、それ以外は遺産全体の2分の1が遺留分として保障されています。
各相続人はそのうちから法定相続分の割合で遺留分を主張することができます(★1)。

遺留分を侵害する遺言も法律上無効になるわけではありませんが、遺留分権利者が遺留分を主張した場合は、その遺留分を侵害する限度で効力を失います。

本ケースでは、妻であるあなたが唯一の遺留分権利者ですので(兄弟姉妹には遺留分はないので)、最大で遺産全体の2分の1を遺留分として主張することが可能になります(★2)。

遺留分を主張する場合は遺留分侵害額請求権という権利を行使することになります(★3)。

なお遺留分侵害額請求権は1年で消滅しますので(★4)注意が必要です。

もう少し詳しい解説

★1 民法1042条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第1項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第900条(法定相続分)及び第901条(代襲相続人の相続分)の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。

★2 実際は遺留分の算定の基礎となる財産の価額や侵害額を事案ごとに法律の規定に従って行います(民法1043条以下)。計算が複雑になりがちなので弁護士など専門家に相談するのがおすすめです。

★3 遺留分侵害額請求権の必ずしも行使は訴え(裁判)による必要ありません。まずは直接相手方(本ケースでは田辺市)に遺留分を請求する意思があることを伝えましょう。それ応じてくれなければ最終的には裁判に訴える、ということになりますが、できれば話し合いで解決したいものです。
民法1046条1項 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者…又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

★4 遺留分侵害額請求権は、相続があり、自分が遺留分を侵害されていることを知ってから1年以内に行使しないと時効により消滅します。また遺留分侵害の事実を知らなくても相続から10年経過すれば同じく消滅します。ですので、遺留分を請求するならできるだけ早めに相手に伝え、場合によっては内容証明郵便などで請求書を送っておきましょう。
民法1048条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。

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