遺言の内容に疑問がある場合はどうすればよいか

Q.夫が田辺市に全財産を寄付するという自筆の遺言を残して亡くなりました。しかし、本当に夫が書いたものか疑問です。どうすればいいでしょうか。

A. 場合によっては裁判で遺言の無効を争うこともできますので、弁護士に相談してみてください。

解説

まず本遺言に形式上の不備があれば遺言は無効ですのでその点を確認します(★1)。

形式的な不備がなかったとしても、実質的に無効となる場合があります。
例えば故人が重度の認知症で当時遺言を書く意思能力がなかったことが明らかであるとか、遺言が故人の筆跡とは全く異なるなど、偽造の疑いがある場合などです(★2)。

もし遺言が故人の書かれたものでないとの証拠がある、あるいはそれを証明できそうだ、となれば遺言無効確認訴訟を裁判所に提起することになるでしょう。

一方で、妻には遺留分があり(★3)、その権利行使期間は1年しかないため(★4)、遺言が有効であると判断される場合に備えて、予備的に遺留分侵害額請求権(★5)を提起することになると思われます。

いずれにせよまずは経験豊富な弁護士に相談するのがおすすめです。

もう少し詳しい解説

★1 自筆の遺言(自筆証書遺言)は(1)全文自筆(財産目録を除く)(2)日付と氏名を自署(3)押印、という形式的な要件を充たす必要があります(保管制度を利用した場合を除く)。また財産目録への署名押印、修正の方法なども決まっています。もし形式的な不備があれば遺言は無効になりうるので、まずはその点を確認しましょう。
民法968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産…の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

★2 実際の訴訟では遺言者の認知症など意思能力の有無を争うことが多い印象です。また遺言書の偽造を主張して筆跡鑑定を行うこともよく見られます。その他、遺言者自身の錯誤や第三者による詐欺・強迫を争うことも考えられますが、意思表示をした本人が亡くなっているためその立証はかなりハードルが高いようです。

★3 民法1024条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第1項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第900条及び第901条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。

★4 民法1048条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。

★5 民法1046条1項 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

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NPO法人相続アドバイザー協議会認定会員。相続アドバイザーとしての業務上の資格としては、行政書士(遺言書・遺産分割協議書・相続関係図・財産目録等の書面作成代理業務)、ファイナンシャルプランナー(税務・保険・年金・不動産などライフプランニングのコンサル業務)、宅建士(不動産の相続プランニング業務)、終活カウンセラー(エンディングノート・介護・成年後見・お葬式・お墓など終活コンサル業務)などを保有。また税理士・司法書士・土地家屋調査士・不動産鑑定士・測量士・弁護士など、相続案件の処理に欠かせない各種専門家との強いネットワークも有する。近時は「幸せな相続」実現のためのツールとしてのエンディングノートの重要性から、各種エンディングノートセミナーやワークショップの開催に力を入れている。