走り書きの遺言は有効ですか

Q.夫が亡くなったあと、コピー用紙に赤ペンで走り書きの遺言が見つかりました。このような遺言も有効でしょうか。

A. 有効の可能性があります。

解説

手書きの遺言のことを「自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)」といいます。

この自筆証書遺言の書き方は民法で決まっており(★1)

  1. 本文が全文自筆(手書き)で書かれていること(★2)
  2. 日付と名前が自筆で書かれていること(★3・4)
  3. 押印があること(★5)

が形式的な要件となります。

したがってこれらの要件が満たされていればコピー用紙でも赤ペンでも形の上では有効な遺言となります(★6)。

もう少し詳しい解説

★1 民法968条1項 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

★2 財産目録については自筆でなくても構いません。ワープロで作成したり、通帳や登記簿謄本をコピーしたものを添付してもよいことになっています。この場合、目録のすべてのページに遺言者が署名押印することが必要です。
民法968条2項 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産…の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

★3 遺言は後の遺言でいつでも撤回できるので(民法1022条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。)、作成時期が重要になります。したがって遺言の日付は客観的に明確でなければなりません。例えば「令和3年5月吉日」というの日付が特定できないので無効です(判例)。一方で「令和3年5月末日」とか「遺言者80歳の誕生日」などは日付が明確ですので有効となります。

★4 名前は遺言者が誰かを特定できればよく、必ずしも戸籍通りでなくても構いません。古い判例には氏だけ、名だけでも有効となりうるとしたものもあります。また通称名、芸名などでも他人との混同が生じなければ有効とされています。例えばタモリが「森田一義」と書かずに「タモリ」と書いたとしても無効にはならないということですね。もっとも、無駄な争いを招かないようできるだけ戸籍通りに書くのが無難です。

★5 押印は実印である必要はなく、認印でもかません。指印、拇印も認められています(判例)。ただ最近の判例で自署した花押は否定されました(最判平成28年6月3日)。どうやらハンコとしての形式がメルクマールのようです。花押風ハンコだったらよかったのかも。

★6 遺言が形式的に問題がなくても実質的に無効とされる場合があることに注意してください。例えば、15歳未満の人が書いた遺言は無効ですし(民法961条 15歳に達した者は、遺言をすることができる。)、認知症など遺言を書く意思能力がない人が書いた遺言も無効です(民法963条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。)。また遺言の内容が全く実現不可能だったり公序良俗に反するものであるような場合も無効ですし、遺言者に錯誤があったり第三者の詐欺強迫などにより書かされたような場合も相続人の取り消しにより無効となります(民法94〜96条)。さらに、後日新しい日付の遺言が見つかり、前の遺言がその範囲で撤回され無効になる場合もあります(民法1022、1023条)。

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NPO法人相続アドバイザー協議会認定会員。相続アドバイザーとしての業務上の資格としては、行政書士(遺言書・遺産分割協議書・相続関係図・財産目録等の書面作成代理業務)、ファイナンシャルプランナー(税務・保険・年金・不動産などライフプランニングのコンサル業務)、宅建士(不動産の相続プランニング業務)、終活カウンセラー(エンディングノート・介護・成年後見・お葬式・お墓など終活コンサル業務)などを保有。また税理士・司法書士・土地家屋調査士・不動産鑑定士・測量士・弁護士など、相続案件の処理に欠かせない各種専門家との強いネットワークも有する。近時は「幸せな相続」実現のためのツールとしてのエンディングノートの重要性から、各種エンディングノートセミナーやワークショップの開催に力を入れている。