相続登記の義務化が可決成立

相続で切っても切り離せないのが土地や建物、いわゆる不動産。

不動産は他の財産(動産という)と違って、他人に自分の権利を主張するには、国が公開している帳簿に登録する「登記」という手続きが必要です。

登記をすると、売買契約書など自分が権利を取得したことが分かる書面に登記官が「登記しましたよ」というスタンプを押してくれるのですが、これが「登記済証」すなわち「権利書」となります。この権利書で不動産の権利者であることを確認するわけですね。相続手続では依頼者のご実家にそのような「権利書」があれば探していただくことになります。

もっとも、現在は、登記のオンライン化に伴う平成16年の法律改正でそのような紙の登記済証の制度は廃止されました。代わりに12桁の記号数字の暗号(登記識別情報といいます)が不動産の権利者の確認方法になりました。したがって、平成17年以降に取得した不動産に関してはこの登記識別情報の通知書がいわゆる権利書の役割を引き継いでいます。

そんな不動産登記ですが、実は登記をするかどうかは権利者の権利であって義務ではありません。つまり、不動産を購入したり相続したりしても、その権利を他人に主張するための「登記」をするかどうかは権利者の自由なのです。

しかしそれがために、登記が契約上の義務になる売買の場合はともかく、相続で不動産を取得したときは登記が義務でないため、登記費用や登記の手間を嫌って登記せずに放置されたり、相続人がいない、もしくは決まらずそのまま何代も未登記で放置されることが少なくありません。

その結果、不動産登記簿からでは所有者が確認できない「所有者不明土地」が増えてしまい、その割合がいまや全体の20%を超えているそうです(平成30年版土地白書)。

面積でいうとなんとトータルで九州全土を超えていて、不動産の利活用に支障をきたすということで社会問題化しています。

そこで今般、国会で相続登記の義務化が諮られ、昨日関連法案が参議院を通り成立しました。これによって3年後、2024年から相続登記の義務化が始まる予定です(名義や住所の変更登記も義務化)。

相続登記の義務化で、相続から原則3年以内に登記をしない場合は罰則(10万円以下の過料)が課せられることになります。が、同時に相続登記の簡素化も予定されています。

相続登記は比較的単純な登記ですので、現在でも時間と手間を惜しまなければ相続人が本人のみで申請することは十分可能ですが、法改正によってさらに手間や費用が軽減され、誰でも手軽に相続登記が申請できるようになるのは良いことだと思います。

当事務所でも弁護士と相続アドバイザーが相続登記のサポートをおこなっていますので、相続登記制度改正のフォローは引き続きしていきたいと思います。

■NPO法人相続アドバイザー協議会認定会員 ■遺言・相続専門行政書士 ■終活専門ファイナンシャル・プランナー(AFP) 詳しいプロフィールはこちら